栗のカッティングボードについて

"栗の木で作ったカッティングボード"

栗の木を使ったシンプルなカッティングボードが完成しました。収まりの良いサイズ感に、「道具」を感じるデザイン。キャンプはもちろん、普段使いでも違和感なくキッチンに溶け込みます。

今回、デザインを担当したのはTAKIBIツールバッグを共同で製作したプロダクトデザイナー・佐藤界さん(FULLSWING)。今回のカッティングボードは、佐藤さんが近年活動しているプロジェクト”Oxygen” と MAAGZのコラボレーションアイテムになります。Oxygenが地域の資源である「多摩産材」を使う意義、カッティングボードのこだわりなど話を聞きました。

ーーOxygenについて教えてください。

Oxygenは多摩地域の資源である「多摩産材」を活用した家具ブランドです。身近な木で身近なモノや魅力的なプロダクトを開発することで多摩産材の利用拡大を目指し、その一端を担うことはできないかという思いで2018年から活動しています。

多摩産材とは、多摩地域に多く生育しているスギやヒノキといった針葉樹のことで、主に建築資材として流通しています。一般的に、家具は広葉樹、強い木材で作られることがほとんどで、家具製作においては多摩産材を使う取り組みを実践しているところはあまりありませんでした。針葉樹は家具として使うには強度が低く、一方で素材の個性は強い。木目だったり、赤、白と色の差が強かったり、節があったり、家具にその存在感を落とし込むことが難しいのですが、それらの特徴を活かしながらプロダクトをデザインしています。

カッティンボードの厚みは僅か9mm。無垢の木は反りやすいので、厚みの真ん中に直交した材(実/さね)を入れ、反りや割れを防ぐ加工を施している。

ーーなぜ、多摩産材にこだわっているのですか?

森や林業を巡っては、山主、林業事業者、製材加工者など、どこの地域においても森林保全や後継者問題、材料価格や賃金などの問題が山積している状況です。私たちは多摩地域のそれぞれの立場の人たちの話を聞き、現場を見て、ワークショップを開催するなどして理解を深めてきました。

プロダクトを通じて森や林業に意識を向けてもらい、地域に良い影響を与えられる一助になればという思いが、「多摩産材を使った家具作り」と言う基本方針に繋がりました。

ーー今回のカッティングボードで使った栗も多摩産材ですね。

スギとヒノキ以外にも東京の山には良い素材があるということを伝えたかったんです。ヒノキには抗菌や抗カビ作用、刃物の当たりも柔らかく良い部分もありますが、TAKIBIツールバッグにしまえるという機能性も考えて、硬さと質感がしっかりとした栗を選びました。

ーーナチュラルとブラックで違った表情が楽しめますね。

元々は染めは考えていなかったのですが、栗の木にはタンニンが豊富に含まれていて、タンニンと鉄成分を反応させて黒く染める鉄媒染という方法を採用しました。

栗の素材に含まれるタンニンと鉄の成分を反応させ、黒く染める濃度と時間の検証をしているところ

ーーデザインのポイントは?

このカッティングボードは以前デザインしたツールバッグとリンクしていて、インドアとアウトドア、どちらも行き来するプロダクトにしたいなと。

TAKIBIツールバッグは、鉄板、焼き網、ごとく、それぞれを使ったあとで丁寧にしまい、持ち運ぶ。道具を使う人たちのそういった所作を意識してデザインしました。同時に、カッティングボードも鉄板などのアイテムと同サイズにすることで、ツールバッグに入れて家から外へ持ち出せるようにと考えました。持ち手部分はハンドソーのような、アイコニックな形状になっています。

ーーキャンパーも「道具を使う人」ですものね。

道具を使う人といえば、ものづくりの世界では職人さんですが、大工さんがノコギリを使った後にしまう「鋸巻き(のこまき)」という大工道具があり、TAKIBIツールバッグはそこから着想を得ています。使って、しまう、持ち運びやすく、機能的というのがアウトドアでは大事な要素だと思っていて、職人さんの道具と通じるものを感じますね。

ーー実際にカッティングボードを使ってみてどうですか?

大きなまな板を出すまでもない、ちょっとしたものを切る時はカッティングボードを使ってそのままお皿がわりにもしています。カッティングボードは特別なものではなく、普段使いでき、薄くて軽く使い勝手の良い「便利な道具」だと実感しています。何より、木のアイテムは生活に溶け込みやすい。アウトドア環境の中でも、日常的に家の中でも、使ってもらいたいです。

ーー今後も共同で色々なものを作りたいですね。

アウトドアのアイテムは道具の要素が強く、構造と機構が難しい。求められる条件が多いです。しかし、デザインする側としては、条件によって削ぎ落として生まれる可能性を感じます。色々な条件を試行錯誤しながら答えを出していく作業は、難しいけれど面白いです。

プロダクトデザイナー・佐藤界さん(FULLSWING)

Oxygen HP:http://www.oxygen-furniture.com/

栗のカッティングボード S

TAKIBIツールバッグ

instagram

maagz.jp